悠久フィロソフィー

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#小説

D.D.外伝第二十六話

第二十六話 焔と合体 「?」 沙耶は首をかしげた。 何が起きるかと予測もつかずにいた彼女の目に飛び込んできたのは、何とも奇妙なモンスターだった。 「何、あれ……」 「バカだな」 「バカだ」 横で、竜也と瀬木が呆れていた。 そしてそのさらに横で、 「あ…

D.D.外伝第二十五話

第二十五話 青と恐竜 「ねえ」 沙耶がルシナの肩をつついた。 「はい?」 「今から何が始まるの? ……浦上くん、何する気?」 振り返ったルシナは、沙耶の不安げな表情を見て苦笑いした。 状況についていけないのだろう。 なら自分と同じだ。 「よく分かりま…

D.D.外伝第二十四話

第二十四話 嵐と乱入 沈黙は竜也が声を出すまで数瞬続いた。 「あ?」 「だから、木本君とこの人で昨日みたく勝負するんですよ。瀬木さんとやったみたいに」 昨日。 木本竜也と瀬木一の勝負は――賭けだった。 お互いに条件を設けての、賭け。 勝者が権利を得…

D.D.外伝第二十三話

第二十三話 癖と提案 「は?」 沙耶が不可解そうな声を出した。 「え……私?」 「お、お前は昨日の」 はっ。 という顔でもってして答矢は口をつぐんだ。言葉を切る。言いかけた言葉を断絶して、唇を結ぶ。 だがもう遅すぎた。あまりにも遅すぎた。 「昨日の?…

D.D.外伝第二十二話

第二十二話 声と足音 「さて」 瀬木が呟いた。 そこは名木嶋研究室。昨日、瀬木と竜也が一騎打ちをした場所。 またも――舞台。 放り投げられしは、安城答矢。 「ぶっ!」 担ぎ上げられ床に叩きつけられた彼はテープの下で悲鳴を潰した。 相変わらず縛られたま…

D.D.外伝第二十一話

第二十一話 黒と覚悟 倒壊寸前、そんな言葉が似合うアパートの前に、1台の車が止まっていた。 車種はセダン。 色は黒。 高級車の代表格が、崩壊しかけた小屋の前に止まっていた。 「やあリューヤ。こんな真っ昼間から人を呼び出すとはいい度胸じゃないかきみ…

D.D.外伝第二十話

第二十話 朝と春風 朝はいつも通りにやって来る。 彼は目を覚ます。 見知らぬ天井が見える。すなわち、見知らぬ部屋に安城答矢は寝ていた。 「……?」 動こうとしても、両手両足を雁字搦めに縛られていて少しも身動きが取れない。 完全なる拘束。 ちょっと待…

D.D.外伝第十九話

第十九話 龍と天使 「What!?」 ニルが叫んだ。 「じゃ、Judgment Dragoon !?」 「無駄に発音いいな」施行の、からからとした笑い声がする。 「しかしそう驚くこともねえだろ」 「いや、デモ、2ターン目です……」 その狼狽したような声を聞いて、施行は両手を…

D.D.外伝第十八話

第十八話 1とニル 「で、どうする気ですか?」 「あ?」 「この人。とりあえず捕まえたはいいですけど」 ルシナは足元に転がっている男――安城答矢を示して言った。竜也と二人がかりで黙らせたまではよかったものの、突発的犯行ゆえに計画性は皆無だった。 「…

D.D.外伝第十七話

第十七話 影と怒号 光は収束していった。 安城答矢と喜街施行、二人が腕を下ろすと、また路地裏に影が差し込む。 「お疲れさん」施行が笑った。 「んじゃ、気分もよくなったし俺帰るわ」 「……」 ひたひたと――喜街施行。ゆったりとした足取りで、その場から去…

D.D.外伝第十六話

第十六話 品と決闘 「っつあ……はあ、はあっ!」 彼は影の中を走っていた。 一心不乱に、周囲を気にせずに――しかし少しずつ、その歩調は緩まっていく。 肩で息をする。 呼吸の荒さが、闇の中でこだましていた。 「な……何だったんだ、さっきのあいつは――」 い…

D.D.外伝第十五話

第十五話 影と名前 むとのはふと、瀬木を振り返った。 「ところで、瀬木先輩」 「何?」 「さっきの何か、名前のようなもの――」 瀬木は言った。 彼女を呼んだ。 『聖清楚』と。 「あれは一体、何ですか?」 「ああ、まあ称号みたいなものだよ。ここ最近使わ…

D.D.外伝第十四話

第十四話 夢と恐獣 ティラノサウルス・レックス。 はるか昔に誕生し、はるか昔に生息し、はるか昔に死滅した巨大生命体。 略称をとって『T-REX』と呼んだり、単純に『ティラノサウルス』と呼ばれたりする。 はるか太古の生物。 はるか古代の恐竜。 現代に存…

D.D.外伝第十三話

第十三話 闇と恐怖 「どうもお邪魔しましたぁ」 「いやいや。何も力になれなくてすまないね」 二人が部屋を出るとき、もう日は傾きかけていた。 影が少しずつ長くなり始める時間帯。 構内の人間が減り始めていく時間帯。 ルシナと竜也が帰るのを、瀬木とむと…

D.D.外伝第十二話

第十二話 噂と会話 「はあ」 瀬木がデュエル・スペースの電源を落としながら呟いた。 「負けたかぁ」 「ほらよ」 竜也は使ったデッキを返して、台を降りる。 「あれで……勝ち、なんですか」 ルシナがおどおどと声をかけた。 「あ?」 「木本君、勝ったんです…

D.D.外伝第十一話

第十一話 龍と決着 ドローカードを正面に持ってきて、竜也は声を出した。 いつもどおりの冷静な顔で。 しかし、少しだけ、不適に口の端をゆがめて。 「俺の勝ちだ、瀬木」 「は?」 「俺が引いたのはこいつだ。創世の預言者を召喚!」 光を放ちながら現れる1…

D.D.外伝第十話

第十話 竜と砲撃 白い龍だった。 そして瞳が青かった。 「ふふふ、どうだいリューヤ。自分の盟友を敵に回す気分は」 「別に。どうとも」 呆気にとられている女2人を視界の端に納めながら、竜也は素っ気なく返した。 青眼の白龍。 攻撃力――3000ポイント。 そ…

D.D.外伝第九話

第九話 罠と予兆 発動されたカードは破壊輪。 今や禁止カードに指定されているほどの、凶悪な罠。 「――ッ」 竜也のライフは残り3950ポイント。 破壊輪がその効果を発動すると、残るライフポイントは――わずかに1150のみ。 フェルグラントドラゴンの首に、がち…

D.D.外伝第八話

第八話 光と制限 遊部ルシナ。 日野辺むとの。 デュエルにまるでついていけない二人だったが、その荘厳さに圧倒されてはいた。 「あの、日野辺さん」 「は……はい?」 ルシナとむとのが顔を合わせる。 お互い、戸惑ったような、困惑したような――それでも、何…

D.D.外伝第七話

第七話 竜と召喚 竜也LP:8000 瀬木LP:8000 「俺の先攻だ!」竜也が叫んだ。「ドロー!」 手札を見る。 仮面竜、創世神、深淵の暗殺者、炎を支配する者にトレード・イン。 今、ドローしたカードは、邪神の大災害。 「なるほど」 このストラクチャーデッキは…

D.D.外伝第六話

第六話 光と開戦 「デュエルスペース?」 ルシナが鸚鵡返しに聞いた。 「なんですかそれ。決闘場?」 「あ、遊部さん知らないクチ?」 瀬木はかつかつと靴の音を響かせながら、その一角へと歩を進めていく。何も言わずについていくルシナ、部屋の入り口で立…

D.D.外伝第五話

第五話 本と部屋 「助かってたんなら言えッ!」 竜也とルシナ。第一声はやはり綺麗に揃った。 何だかんだと、この二人は間の取り方が近しい。 「まあまあ」 「『まあまあ』じゃねえ!」 「私たちがどれだけ不安だったか分かってますかッ!?」 わめく二人を…

D.D.外伝第四話

第四話 本と不安 一冊の本は人の手に納まる。 二冊の本は両の手に納まる。 三冊の本は腕で抱えられる。 四冊の本は両の腕で抱える。 五冊の本は積み上げて運ぶ。 六冊の本はよろけつつ運ぶ。 七冊の本はふらふらと運ぶ。 八冊の本は重たそうに運ぶ。 九冊の…

D.D.外伝第三話

第三話 鬼と変態 遊部ルシナは『奔放風』と呼ばれる。 それは彼女の性格を象徴し、彼女の性質を批判し、彼女の特質を揶揄し、彼女の特徴を風刺するような二つ名。 奔放、どこに行くか分からない、何を起こすか読めない、風。 軌跡の見えない奔放風。 軌道の…

D.D.外伝第二話

第二話 目と態度 木本竜也の見た目は決して悪いものではない。 短く刈り上げたウルフテイスト、目立ちすぎない小さなピアス、洒落っ気のない簡素かつ地味な服装。 標準形、と本人は呼ぶ。 背も平均より高いくらい、腹が出ているわけでも、横幅が広いわけでも…

D.D.外伝第一話

第一話 噂と空気 さほど昔ではないが、今となっては過去の話。 思い出すのも面倒な、噂話。 思い返すのも退屈な、御伽。 それでも、物語の始まりがあるとすれば―― それはやはり、この地点。 「突然ですがここで、最近巷で噂になっているおかしな話を聞かせて…

D.D.外伝序章

序章 始まりと終わり 物語には必ず始まりがある。 物語には必ず終わりがある。 始まっていない終わり。 終わっていない始まり。 これは過去の物語。 これは開始の物語。 始まっても何も始まらない。 始まっても何も終わらない。 終わっても何も始まらない。 …

D.D.―Duel Discipline外伝 【予告】

ネタがちょいちょいたまってきつつあるので遊戯王小説を書こうかと思います。 『D.D.―Duel Discipline』 の外伝です。 本編も全然進んでないのですが何故か外伝が先に(笑 以下簡単な物語あらすじなど 舞台は本編の数ヶ月前。 次世代型立体映像のプログラム…